TOV黒夢
TOV黒夢 --08
ぎゃあぁぁあぁぁぁぁ!!!
夜明けも遠い夜半の闇を、悲痛極まりない男の悲鳴が切り裂いた。
声が聞こえた兵逹が聞き覚えのある声の、彼らが今まで聞いたことがない絶叫。
ただ事ではない。そんなこと誰にだってわかった。
誰か誰か誰か誰か!!はやぐ僕を助けにくるんだ!!
早くしろ!!はや、はやぐしろぉぉ!!!
「キュモール様!?」
彼の自室から響く声に、駆けつけた騎士の一人が慌ててドアノブに手をかけるが、当然鍵は閉まっていた。
ひいっ いだいぃぃぃ!!
「キュモール様!」
「そこをどくんだ!」
パニックを起こしてドアを開ける手段を見失った騎士を押し退け、背が高い銀髪の騎士が己の剣をドアへと叩きつける。
破壊されたドアを抜けた騎士逹がみたのは、ベットに横たわって両手を血まみれにし、口から泡を溢すキュモールと。開け放たれた窓枠に腰を下ろしている一人の女の姿だった。
「…なんだね君は?」
「復讐にやって来ました、ハローハロー!
私怨でここまで来ました、ハローハロー!」
銀髪の男からの問いかけに、彼女は窓枠に座ったまま足を組み替えて笑顔で答える。
女だが、少女と言ってもいいような顔つきだ。
そんな彼女が、ベットの上で激痛にうめく男の状況を作ったのか。
両手から血を流しているキュモールは銀髪の男を見つけて顔を歪めるが、その口からはまともな言葉は発せられない。
「彼を助けるのならどうぞお早く。
軟弱な精神が病んでしまう前にね。」
「彼が何者か分かっているのか君は。」
彼女は深く首肯する。
「ええ、承知よ。承知ですとも。知らなくてここまで来れるかしら?
馬鹿にしてるの?それとも確認?
まー、どうでもいいけどね!用は済んだし!」
「ならば、君は罪を償う気はあるのか。」
「ないわ!あるわけ無いじゃない!
だって、彼の暴挙が成したことよ。自己責任だって。
おじさんみたいな人が気にすることじゃないわ。
彼が今後、罪が無い人を殺めなければ、二度とこんなことはしないわ!」
ニコリ、花咲くような笑顔。
「キュモールさん、貴方がまた、悪戯に人を殺せば、私はまた来ます。
私がその事実を知ってすぐに、貴方の元へ駆けつけます。針を持って。」
「その 女を 殺すんだよッ!!!!!」
キュモールの絶叫に、彼の隊員である騎士が慌てて腰から剣を抜き、そして銀髪の騎士の隣を走り抜ける。
剣先は、窓枠にいる少女へだ。
「なるほど、殺害する一人目は私なのね!
じゃあ私はまた来るわ!バイバイダーリン♪」
剣先が届く前に、少女は背中を窓枠の向こうへと倒した。
窓は開けられている。
ならば彼女はどうなるのか。
するりと窓枠を滑って外へと落ちるドレスと足。
驚きに足を止めた騎士の隣をもう一人の騎士が逆に追い越して窓枠に駆け寄るが、そこから見下ろした階下には、彼女の姿は無かった。
死体も何も、痕跡が無かった。
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2010/10/27
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