3:サーモンときのこのスパゲッティ
あまーい綿菓子、リンゴ飴。
金平糖とかりんとう。
懐かしいおもちゃに流行のおもちゃ。
私を宥める手管にはなり得なかったね。
3.サーモンときのこのスパゲッティ ただしきのこは真っ赤なものを
私は、悪夢でも見ているんでしょうか。
平時でも滅多に泣かない私ですが、こんな時ぐらいは泣いてもいいんでしょうか?
右には剣を持ったマニアさん。
左にはナイフを持ったマニアさん。
正面にはそれらを侍らせたマニアさん。こいつ一人が偉そう。
ついでに言うと、背面にはちょっとした崖。
四面楚歌。
ピンチですね。
紛れも無いピンチです。
どこから集まってきたのか、その人数は十数人ほどになっている。
こんな小娘相手に何をムキになっているんだこの人たちは・・・ねぇ、何が楽しいの。この法治国家でそんなことをして何になる!? 全員まとめて豚箱に行きたいのか!? 集団になることで罪の意識が緩和され、度々人が犯罪の渦に巻き込まれるようなことはあるけれど、それは勘違いの一言でしかない。
私が関わったからには全員臭い飯を頂いて貰う!
こいつらの国籍が外国の物だというのなら、その国家それぞれに対応した、こいつらがしでかしているこの行為相応の処分を下させてやる!
「はっ いっちょまえに睨んできやがる。」
正面の男が言葉を吐いた。
それに「げはは」とか「かかか」だとかいう、笑い声が続く。
品性の欠片も無い低俗な笑い方。
「売るにしちゃ小物だが、持っているものは随分面白そうだな。
女、テメェどこの国のもんだ?」
・・・・・・・・・・・・な、んか・・・今、分けわかんないこと聞かれたぞ。
「『どこの』って、私は今踏みしめているこの大地の国の出身者ですよ?」
「ほぉ、見たことが無い毛色だからてっきりキムラスカの人間と思ったが、そうかマルクトの人間か。」
「ちょい待て。」
思わず片手を掲げて男に声をかけた。
私に面した男は信じられないというように目を剥くが、そんなの知るか。
私は先ほど、私は今地面を踏みしめているこの「日本国」の生まれだと言ったつもりだったのだが?
少なくとも私の記憶にある限り、日本国内に『マルクト』やら『キムラスカ』などという横文字系の土地は無かったように思う。
・・・ああ、もしかしてここは彼らの言う擬似的な戦場なんでしょうか。
それの国の名前が『キムラスカ』と『マルクト』・・・
「・・・あなたは、どちらの国の人です?」
「変な奴だな。俺は無論、マルクトの人間だ。」
「じゃあ、マルクトの人間である私は味方に位置するんじゃないですか?」
「はぁ!?」
男が再び目をひん剥いた。
「そもそも私は一般人なんです。無関係なんですから下手なことをしないで開放してください。そうしてくれれば訴えることは諦めますから。
いやー、こんな小娘に時間を割くよりももっと有益なことがありますよ。
邪魔をするつもりはなかったんでどうぞ勝手に戦っていてください。
もしよければ街のある方向だけでも教えてください。勝手に帰りますから。」
「わけわかんねぇこと言ってんじゃねぇ。
肝が据わっているみてぇだが今の状況、分かっていってんのか?」
怒声を上げる男の様に違和感を感じながら、私はとりあえずへりくだってみる。
「・・・よく分かっていないので一言で説明してもらえません?」
「テメェを、殺そうとしてんだよ。」
あははははははっ
どうしよう、頭悪い人がいるよー!
殺人のリスクを毛頭に理解していない人がいるよー!!
「そういったことは『キムラスカ』とやらの陣地の方としてください。
私は関係ないんです。放っておけっつってんですよ!!」
イライラとした感情を隠そうともせずに私は噛み付く。
この人数相手に殺人予告をされていれば逃げようも無い。
なら、少しでも反撃させてもらうのが筋だ!
「なんだ、と?」
僅かにこめかみを引き攣らせた男の声に、私は更に畳み掛ける。
「戦争ごっこ、犯罪ごっこに一般人を巻き込むなって意味!
弱者に手をかけて満足するような低俗の人間が粋がってんじゃない!!」
「いい気になるなよ女!!」
「女という単語だけでしか人間を表現できない奴がほざくな!!」
チリリッ
私の周囲で男達の殺意が膨れ上がると同時に、空気が、震える音。
―お?
ヅ ドォン
新緑のような鮮やかな光が私の頭上から斜めに地面に降ってきた。
バリバリと音を立てて瞬いているその塊は剣の形をしていて、地面に刺さったところを中心にして同色の円陣が浮かび上がる。
バリバリバリバリ!!
その直後に円から閃光が迸り、その周辺にいた男達を薙ぎ払った!
悲鳴は轟音に掻き消され、光が消えると同時に男達が軒並みに倒れ伏していく。
焦げ臭い・・・何、雷?
突然の事態に身動きが取れないでいると、いきなり森の茂みから何かが飛び出してきた。
黒い塊は器用に倒れている男達を避けて一直線に私へと向かってくる。
いや、黒じゃなくて、赤だ。
「っ、何だテメェは!?」
リーダーっぽかった男が一人起き上がって、右手に持っていた剣を塊へ向かって振り上げる。
だが、先ほどの光を受けた体の動きは愚鈍だ。
流れるような動きで、飛び出してきた塊の右手が煌めく。
ズバンッ
そして質量のあるものが薙がれる音。
男の左脇腹から錆色が溢れて、私のすぐ目の前まで飛び散る。
突如表れて男を斬り伏せた黒と赤の塊は、一人の青年だった。
信じられない。
こいつは、躊躇いも無く人を斬りやがった。
信じられないものはもう一つ。深みのある真っ赤な髪を伸ばしている、翡翠色の瞳をしたこいつの容姿だ。
何だこいつ。はじめて見たこんな人間。
そしてコスプレイヤー!
美人なのに!勿体無い!!
「―ぼさっとするな!!」
「ひぇっ!」
美人さんは険しい顔をしたまま私を一喝した。
おぉう・・・迫力・・・
剣についた液体を振り払いながらずんずんと私に歩み寄ってくる。
私・・・は、斬らないのかな。この様子だと。
ひょっとしてこの人は、
「・・・キムラスカ側の人ですか?」
「馬鹿言ってねぇでとっととこい!」
私の予想はあっさり斬り捨てられる。
なんだ、てっきり私とあいつらを仲間割れしているからとか言う理由で助けたのかと思ったのに。
質問の意味がなくなってしまったが、『こい』というからには『一緒に』と言う言葉も付属していいのだろう。
汚いおじさんのオンパレード・オンステージ・バッドエンドより、不審で攻撃性の盛んな美人さんのほうがマシってものだ。
「すいません助かりました、助けてください。
付いて行きますから置いていかないでください。」
私は荷物を抱えなおして美人さんの隣に駆け寄る。
赤い髪が揺れてその左手が私に伸ばされ、音を立てて右手が掴まれた。
グローブ越しであまり掴まれ心地がいいとは言えないが、先ほどおっさんに髪を掴まれたことを考えれば雲泥のぉっ―
思考が中断されるほど強く腕が引かれた!
肩 が 外れる かと !!!
「〜ッ ! ッ!!」
叫ぼうとした罵声は飲み込んでおき、突如走り出したこの男(美人さんなんて言ってやらね!)に引き摺られるようにして私も走り出す。
女の子に対して何の配慮も無い走り方に脱帽だ!
っていうか掴んでる手首が痛い痛い!!
一難去ってまた一難、って訳じゃないと思うけど・・・ああ、苦労が絶えなさそう。
まともな人間はいないんですかー?
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2007/01/30
白馬に乗らないおうぢさま。 助けてください、貴方から。
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