02:忍たま夢




 我が家の出口は入り口でした --02





「随分おかしな格好をしておるな。南蛮の物かの?」


信じられない事態に思わず呆然としていた私を、まじまじと眺めていた彼からの言葉。


「は?いや、ただのスーツです。私はしがないOLですから。」

「すーつ?おーえるとはなんじゃ?」


そこまで設定に凝らなくて良いよ!
あ、朝っぱらから迷惑を被っているのは私だというのに、なんでまたこんな扱いを受けなきゃならんのか!
今日は大事な日だっていうのに!!

「い、いい加減にしてください!」


私の堪忍袋の緒が切れた。


休暇がかかった大事な仕事が控えている今日に限って、なんで!
どうして私なんかが、こんな不思議事態に!


ロープを体に巻き付けたまま立ち上がり、私は大川さんへと怒鳴り散らす。


「何だっていうんですか!どういう仕組みかわかりませんけど、我が家とここを繋いでなんの意味があるんです!迷惑です!即刻元に戻してください!!」

「…何を言っておるのじゃ?」


何を、だとぉ!?
カーっと感情に高まった血液が、脳味噌を煮立たせているような錯覚を覚える。

「そこのドアと、我が家の玄関を勝手に繋げないでください!!」


行儀悪く、座敷の中央らへんにあるだろうドアを顎で示して、私の思考は一瞬止まる。



あのドピンクなドアって、見覚えある…!



「ドア…とはこの門のことか…なっ何じゃここは!?」


私の視線を辿って開いたままのドアの奥を覗き見た大川さんは、これでもかと大きく目を見開いて驚いていた。
私が聞きたいことだってのに、そんな反応されても困るよ。


「どうなっておる!?」



 ―ガッゴォン!


 どさっ




そして大川さんが勢い良くドアの向こうへと体を傾けた瞬間、彼は見えない何かに阻まれ、のけぞって床に倒れた。


すっっごい音したよ!?



「お、大川さん!? おおかわさーん!!」

大声で呼ぶが、彼はピクピクと小さく動くだけで、全然反応を返してくれない。



うー あー


…もう!!



「ヘムヘムくん、これはずすよ!」

「へむ!?」


構わず体に巻き付いていたロープをかなぐり捨てて、私は大川さんへと駆け寄った。
強めに肩を叩きながら再び声を掛けるけれど、反応なし。
うぅぅ、衝撃に目を回してるだけか。
呼吸に変な乱れはないし、多分大丈夫だろう。


「こりゃだめだ、完璧に目を回してる。冷たい物で冷やす方がいいかもしれないなぁ…ヘムヘムくん、何かありますか?」

「へむぅ…」


私の隣に駆けつけた謎の動物のヘムヘムくんは、少し何かを考える素振りをしたけれど、ややして深く頷きどこぞへと走って行った。
人語がわかるのか…すごいなあの子。

さて、問題は大川さんだ。
気を失った老人を放っておくほど、私は薄情な人間じゃない。
このまま床に転がしておくのはあんまりだけど、人様のお宅の押し入れを勝手に開けるのも気が引ける。

仕方がない。

妥協案として私は上着を脱いで手早く折り畳み、それを大川さんの頭の下に挟みこんだ。これで、いくらかは寝苦しくないだろう。


「へむへむー!」


そうしているとヘムヘムくんの声が聞こえたのでそちらへ振り返ると、彼は両手で桶を抱えて走っていた。
重ね重ね本当にすごいなー!


「えーと、これを濡らして使っても良いかな?」

「へむ。」


畳に置かれた桶の縁に引っかけられた手拭いを持って訊ねると、力強い頷きが。
早速桶の水にそれを浸すと、やけに冷たかった。
井戸水か何かかな?
手早く絞って、大川さんの顔の赤くなっている、おでこと鼻に載るように、手拭いを充てた。

仕事に間に合うかどうかは死活問題なんだけど、時間はまだまだあったから何とかなってくれるだろう。
何とかなってくれなきゃ困るが。

早く確かめたいけれど、先ほど、大川さんが開いたままのドアを潜れなかったことが、どうも解せない。
私はあそこを通ってきたんだもの。


確かめたい。
確かめなきゃならない。








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2012/07/23

さん
色々裏設定あり
でも、学園長の胡散臭さには敵わない
あれ、名前変換無いね


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