02:復活夢
復活夢 --02
「ぐははははっ ランボさんだもんねー!!」
やかましい騒音に私は思わず飛び起きた。
何? 何事!?
っていうか誰!?
ズガンッ
「ぐぴゃぁぁぁっ!!」
声の主を見つけると同時の銃声。
そしてこの部屋の入り口に見えた小さな人影が尾を引く泣き声をあげて吹っ飛んでいった。
小さな人影は子供・・・ランボさんとやらは開けられたドアの向こうの壁にべちゃりとその体をぶつけ、そして恐怖に引きつった顔を溢れ出る涙で濡らしだす。
もさ、いやもじゃもじゃした黒い髪には丸い穴が開いてるように見える。
えーよかったね、風穴がそこで。
まって、『銃声』って何?
判別が利く自分だって平和ボケの日本人離れをしていると思うけど。
ふと視線を巡らせると、カーテンの隙間から漏れ入る光のおかげで部屋の内情を良く確認できた。
うーん、見る限り若い子の部屋って感じ。
うん。 これ現実逃避。
「う゛ うあぁぁぁぁぁんッ! づなぁぁぁぁぁっ!!」
「おぉっ!?」
涙と鼻水まみれの子供が飛びついてきた。
思わず受け止めようと両手を伸ばす。
どぎゃっ
その瞬間、目の前に黒い影が現れ、哀れランボ君は飛んだ軌道を更に辿った。
私の腿の上、布団を挟んだそこに着地した黒い影は、黒い帽子に黒い服を着た小さな子供のようだった。
・・・あ、昨日の子か。
突然降ってわいてきたその子は信じられない脚力でもってランボ君を蹴り飛ばしたのか。
末恐ろしい。
黒い服の子供は呆然とする私に背を向けたままぴょいぴょいと軽い足取りでドアへと向かい、大きな泣き声を引きつらせるランボ君に言い放つ。
「午前中は面会謝絶だ。飯はランチアに運ばせるんだぞ。
もし勝手に入ってきたらどいつでも脳天ブチ抜くからな。」
物騒ー!可愛らしい声でなんて物騒なことをおっしゃるお子様だ!
泣く子を黙らせた子供・・・いや、彼は静かにそのドアを閉めてここを密室にした。
・・・まぁ私の戦慄など毛ほども役に立たないからこの際どうでもいい。
ドアの向こう、遠ざかっていくくぐもった泣き声。
それが聞こえなくなってようやく、子供はこちらへと振り返る。
帽子から覗く髪も黒、くるくると丸い瞳も特徴的なもみあげも黒。帽子のふちに乗っている小動物が鮮やかな緑なのになんでか和んだ。かわいい。
トカゲ・・・じゃないみたいだけど、何だこのこ。
じっと見つめていたら黄色い目がくるりと動き、長い尻尾がふらふら振られた。
か、かわいいぞ!
「具合はどうだ?」
「あっ ハイ・・・はい、かなり調子は、いい、デス。」
喉に違和感はないのにやっぱり声がおかしい。
眉をしかめつつ、他人のもののように聞こえる声で返答を返す。
こちらへ歩み寄ってくる黒い子供はにやりとニヒルに口の端をあげた。
んー 赤ん坊、に見えるんだけど、どうも動作が格好良い子だな。
「じゃあまずは、自己紹介をしてもらうか。」
その体に合った黒い椅子に座って、子供はそう切り出した。
さて、どうしたものか。
「名前はです。一応、19歳です。」
「なんで『一応』なんだ?」
「なんか世界中をあっちこっち飛び回っていたんで時間感覚が微妙なんです。」
まぁ、『世界』中、だ。
全部の日数合算したら私、どうなるんだろう?
いっやー・・・考えまい。
ていうか、自己紹介って何を言えばいいんだっけかなー。
『自分』ってむずかしいよね。
「両親はいません。二人が残した遺産を食い潰して一人暮らしをしています。
・・・それで、自分がここにいる理由がわかりません。」
両手を軽く掲げて万歳。
だってわからないんだもの。
考え始めたらキリないから運を天に任せるわけだけど!
そんな変な紹介だったのに子供の表情は変わらなかった。
「えー・・・できれば、何を知りたいのかお聞きいただけません?」
視線に耐えられず先に根を上げたのは私だ。
「俺の名前はリボーン。一流のヒットマンだ。」
「ひっとまん。」
・・・・・・こっ・・・殺し屋?
「ま、今は家庭教師をやっているんだけどな。」
あ、殺しのお仕事でご滞在じゃないのね。
だけどそれも結構聞き捨てならない。
「ヒットマンの家庭教師。・・・次世代のヒットマン?ニューフェイス?」
「オレが今手ぇかけてるのはマフィアのボスだ。」
「じゃっぽーねのまふぃあ。」
・・・ヤクザさんですか?
っていうか、日本の殺し屋さんがこんな格好ってのもすごいね。
「本部はイタリアだ。」
「あ、そうですか・・・って今私、口に出してませんでしたよね!?」
ちょっと待てぇい! 何、今の返答のタイミングはおかしい!!
しかもこの指摘に彼の笑みが深まったのは気のせいじゃないぞ!
「おっと、気にすんな。」
「いやいやいやっ 何ですか、なんですか!?」
妖怪 サトリ!?
―ジャコンッ
「誰が妖怪だ。」
「いやっ あのっ 暴力反対!!
えっ 私の思考だだ洩れですか!?」
重い音を立てて彼の手にうまれた銃の口がこっちに向いた!!
まって!それはまだ困る!!
洒落になんない、これは結構困る能力ですよリボーンさん!!
「心配すんな、必要があるときしか読心術は使わねぇ。」
「今の私に対しては大判振る舞い大開放中・・・?」
「何しろおめーは不審者だ。」
ざっくーん。 傷つくよ!事実なだけに!
「えー・・・っと、じゃあさっきのランボくんが教え子さん?」
にしちゃあ扱いが可哀そ―っ ぉ お!!
ズドンッ!!
「あんな雑魚を面倒みるわけねーだろ。殺すぞ。」
「殺さないでやってください!!」
私が上半身を反らさなかったらどうする気だ!! こええー!!
一流なら無駄弾使うな!!
・・・あっ
咄嗟にそう思った瞬間、リボーンくんの表情が変わった。
「『一流』のナニを知っているみてぇだな。」
ニタリと笑わないで頂きたい!
私、凡人ですから!!
「ぅえ あ、―じゃあ、先ほど言っていた『ランチア』さん!?」
「そいつは別のファミリーの人間だ。」
「そんな人をご配膳に使うんですかあなたは!」
ご飯をその人に運ばせろとか他所のマフィアさんに指示できることなの!?
「オレは一流のヒットマンだからな。」
「それ関係なくないですか・・・」
しかし、私が寝てるこの部屋はどう見ても日本の一般家庭の、一軒家の一室っぽいんだけど、もしかしたら実はぜんぜん違うのかしらね。
ここは、マフィアさんと殺し屋さんの隠れ家とか?
こんな、小物から散らかり具合まで何から何まで揃えた隠れ家。
・・・で、そんな人たちに私は助けられた?
それもなんか違う気がする。
そんな人たちのところに侵入しようものなら吊るし上げられるのが普通じゃないの?
こんなふうに、熱があるからと寝かせられる、わけはない。
いや、そんなに優しくしてくれる人もいるかもしれないけど、私は違うでしょう。
優しくされるてっぺんと底辺をわかってる・・・と思うからなのか。
日本社会に平気で銃持って闊歩できるマフィアさんに優しくされる謂れは無い。
・・・なんかすげー嫌な予感がむらむら。
「私は、なんで、ここに?」
自分自身を指さして、その手を見てぎょっとした。
誰の、て?
え
お おぉ えっ
あっ これは初めてだなー!!
「オレの生徒は、こいつだ。」
そう言ったリボーンくんの手から一枚の写真が投げられた。
丁度良く私の膝に飛んできたそれをとりあえず思考を止めて見る。
中学生ぐらいの少年が写ってた。
日本人らしい顔つきと、おそらく遺伝だろう特徴的な髪型を形作るのは日本人には珍しい明るい茶色の髪、瞳も明るい茶色だった。
好感が持てる顔つきなんだけど、なんでこんなに恐怖混じりな表情?
・・・んで、何でこの子パンツ一丁なの。いじめか?
「えー ・・・利発そうなお子様で。」
無難なコメントを返しつつリボーンくんを見ると、あれ。
顔色の悪い生徒君がみえるぞ☆
あれ? リボーンくん、その手に持っているのは鏡じゃないの?
「写真?」
「いーや、鏡だ。」
「ですよねー!」
・・・
「 ッ ッ ッ!!!!!!!」
うっ うあああぁぁぁあぁぁあぁあぁぁぁぁぁッ!!!!
ちょっと待ってくれ 畜生 馬鹿 冗談じゃない!!
脳内で絶叫する。
そりゃあ叫びもする。
リボーン君の小さな手が持っている、丸い大きな手鏡に映っている茶色い髪の茶色い瞳をした子が、すさまじく表情を引きつらせている。
わたしがきみで! きみがわたし!
あははははっ あはははははは!!
「ふっ ふざけんじゃねえぇぇぇぇぇッ!!」
思わずベットの上に立ち上がって絶叫した。
おっ おっ 男の子!?
私、男の子になっちゃったのかよ!!
あはははははっ!! これは新しい展開だな!!
「男の子は初めてだなちくしょッ」
自棄になって自分の両胸を掴んだら、柔らかかった。
わおっ 馴染みのある感触。
さっ と首をリボーンくんに向けたら絶妙なタイミングで鏡の角度が変えられ、私の顔が確認できた。
生徒君のお顔。ほっそい体。特徴的な髪型。
自分で自分の胸を掴んでいる姿は滑稽ですけど。
「・・・」
そっと、ぷちぷちとパジャマの前を開くと、ふくよかな胸から大人な女になりきっていない細っこい胴からへその形まで、まったく見覚えのない体が露わになった。
パンツとズボンを一緒に引っ掴みゴムを限界まで引っ張ってみたら、下着はトランクスで日に焼けていない青白い下っ腹から足の付け根まではっきり見えた。
間違いない、女の子の体だ。
でもこれは私の体じゃない。
いや
もういやだ。
すっごい決意の揺らめき、どうしよう。どうしようもない。
っていうか私悪くないし。
ベットに両膝を落とす。
踏み込んだ布団が柔らかい。
わたしは だれ ?
「・・・・・・・・・あ・・・泣けてきた・・・」
もろもろと涙が溢れて零れていく。
頬を伝い流れ、開いたままの胸元に落ちる。前を閉じる気にもならない。
私の世界だけではなく、私自身すら奪うのか。
わたしは 『私』 なのに
「・・・・・・わたし・・・わたし・・・わたし・・・・・・」
ぶつぶつと暗唱。
私が、『私』だと証明するのは、私しかいないんだ。
「・・・先生、生徒さんのお名前は?」
「沢田綱吉だ。」
「その子は今どこに?」
「昨日から熱を出して寝ていた。」
覚えのある熱の余韻に思わず嘲笑を浮かべた。
「そのベットでな。」
「ですよねー・・・うっ・・・あー泣ける・・・どう説明すりゃいいんですかコレ。」
こんな子供がひとりで生活しているはずもない。
(ランチアとかランボくんとか名前がぽっと出てくるあたりきっとそう。)
私の人生があったように、この子には、この子の生活があったはずなのに。
それを私が壊したのか。
そんな奇天烈な状況を納得させなきゃならない。
っていうか納得してもらわなきゃ困る。
なんとかして綱吉君を助けてあげたいんだ。きっと私一人の問題じゃない。
この世界じゃ私は何の力も持たない。
協力がいる。力を貸してもらわなきゃ・・・
しかしマフィアのボス候補さんの体を乗っ取っちゃったとか、私、無事でいられるのか・・・?
「とりあえず泣き止め。焦ってもどうしようもねーんだ。」
私の正面に現れた黒い子供はそう言いながらハンカチを差し出してくれる。
ずいぶんなジェントルっぷりに思わず笑ってしまう。涙はなかなか止まらないけれど。
ハンカチをありがたく借りていると、リボーンくんの帽子のふちに乗っていた緑色の動物が飛び降り私の膝の上に乗ってきた。
その子がちろちろと伸ばした舌はむき出しのままの私の腹を撫でる。
あ、涙を舐めたのか。
「・・・くすぐったいよー。このこはリボーンくんのペット?」
「ああ、オレの相棒『形状記憶カメレオン』のレオンだ。」
形状記憶って、おいおいおい。
眼鏡かよ。Yシャツかよ。
「・・・そっかぁ・・・」
まぁ、深くは突っ込まない。
だってこのレオンくん、可愛いし。
指先でひんやりとしたレオンくんの頭を撫でて視線を彼方へと投げた。
電話を貸してもらっても、私が期待する結果にはならないんだろうなぁと、諦めを超えた確信を持って。
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2009/04/18
憑依トリップ性別転換・・・茨なのは分かっています。
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