15:復活夢D
復活夢 --15
チェストの前にいたはずの二人の姿が消えたかと思ったら、二人分の靴先がチェストから離れた場所に着地するのが見えた。
それが分かって、硬直していた自分の体から力が抜ける。
びっくりした…二人が撃たれてしまったかと思った。
「…ッ リボーン!危ないだろう!」
「手加減してやったあまっちょろい弾ぐらい、避けて当然だろうが。甘えんな。」
聞こえた10代目…面倒だ、沢田さんとリボーンさんとやらの会話に、彼らが顔見知り以上の関係だと察する。
しかし、なんて若い声だ。まだ子供のものだろう。
「それで、ケツ揃えてなにやってたんだ?」
「撃つ前に聞くだろフツー!?
…犬が、あの下に入ってんだよ。」
「…犬?」
訝しげな声を出して、リボーンさんはこちらへと歩み寄ってくる。
あ、足音しないよこの人!こっわ!
「ふぅん…犬、なァ…?」
「リボーンさん?」
ハヤトさんの問いかけには沈黙を返すだけで、細い足の少年はこちらに両爪先を向けたまましばし何かを思案する。
顔色を窺えないのは不安だ。もしや私にも銃をぶっぱなされるんじゃないかってヒヤヒヤする。
「おい、犬っころ。」
「わふっ」
なんですか少年?
とりあえず返事。
「あいつらには手は出させねぇ。出てきやがれ。」
「わうっ ヒャン!」
いやいや、守ってもらえるのは嬉しいですが、このままじゃダメですか?
「…一応メスなら、ンなきたねートコに入ってんなよ。」
「わうわう!わう!」
無駄な足掻きでもなんでも、私は追い出されたくないんです!こんな状態だと、摘まみ出されておしまいじゃないですか!
「だから、手を出させねェっつってんだろ。」
「うぅぅ…―わふ?」
本当ですかぁ?…―は?
今気づいた。
なんで少年と会話が成り立ってるんだ!?
「今出てくるならテメーの言い分くらいは聞いてやる。さっさと決めやがれ。」
「ヒャン!」
言葉が分かるんですか?
「ああ、何なら大サービスで他の奴らにも訳してやる。」
「わうわう!」
うわわわ!超人だ!アンタは神か!?出ます!出ます!
慌てて叫びながら私は彼の足元へと飛び出した。
見上げた少年は黒い帽子をかぶって、黒いスーツを着ていた。先ほどハヤトさん達に火を吹いた銃などは目につかない。懐にでも入れているんだろうか。
スーツよりも黒く見える目をこちらに向けて、彼は口の端を僅かに持ち上げる。
おやー格好良い。
背格好に不相応な程の色気を感じていると、リボーンさんの頭上から緑色の何かが降ってくる。
目の前に着地したのは、黄色い目をした…カメレオンだった。
「……わう?」
えーと…はじめまして?
流石に返事はなかった。
いや、あったかもしれないんだけど私には分からない。
カメレオンくんはパチパチと瞬きをして、そしてリボーンさんの方に向き直る。
気付いた少年は軽く屈んで手を差しのべ、当然のようにその手によじ登るカメレオンくんを自分の肩へと乗せてあげた。
「で、なんであんな場所に入ってたんだ?」
「わふっわう」
ハヤトさんに飼って欲しくて粘ってたのに、ハヤトさんはここに連れ帰っておきながら私を捨てるって言うんです!
「わわうわう!」
私はもう悔しくって!困らせたくはなかったんですが、他に私の意思の表しようもなくって。
うぅまた泣けてきた。
悔しさ半分、言葉が通じる嬉しさ半分だ。
私を見下ろす少年が面白そうに鼻を鳴らし、私へも手を伸ばしてくる。
されるがままに胴から掴み上げられて、私は彼の顔の前に晒される。
「獄寺の迷惑になるって分かっても、オメーはゴネるか?」
「…わう」
本当に迷惑なら、当然諦めますよ。
自分の目が据わるのがわかる。
「わうぅわう」
ただ、一日二日も面倒を見ずに判断されたっていうのが腹が立ちます。
「ハッ、言うじゃねぇか。」
「…リボーン、こいつなんて?」
「ああ、獄寺が一度も面倒もみずに手放すっつったから腹立ってるんだとよ。」
「ヒャン!」
いい子にします!
「お利口にするってよ。…お前、おもしれーな。
良い機会だから獄寺に言いたかった事全部言っとけ。」
許可してもらえるなら!
そんな私の気持ちに気づいたのか、私の体の向きがハヤトさん達の方へと向けられた。
「わうわうわう!」
「飼う気がないなら最初からほだされないで下さい!期待を砕くぐらいなら、泣き付かれても突き放す方がよっぽど情があるってもんです!」
「わうわうわう!」
「持ち上げといて絶望させるなんてイジメですか!?
イジメ反対! イジメ格好ワルイ! 滅べイジメ!!」
「リボーン?」
戸惑い100%の沢田さんは無視!
「わうっ!わう!」
「気がついたら見知らぬ土地で、しかも聞こえるのが異国の言葉で、どれだけ心細かったと!ハヤトさんの存在にどれだけ救われたとお思いですか!」
「ちょ、ちょっと待って下さいリボーンさん!」
いよいよ、ハヤトさんが止めにかかった。
一言一句違わずに、かつ口調まで真似て訳すリボーンくんに驚愕するが、それはともかく。
ようやく黙る私をハヤトさんは深い疑惑の眼差しで見つめ、そして何を言えば良いのか分からないって顔をした。
彼の隣にいる沢田さんも不思議そうな顔だけど、こちらはどこか楽しげだ。
「…本当にそいつがそう言ってるんすか…?」
「わざわざオレがコイツを真似て何の得があるってんだ?」
答えたのはリボーンさんだ。表情は分からないが、きっとこっちは全力で楽しそうなんだろう。
私の証言だと信用できないならこれでどうだ。
「わうっ」
「なんでしたら今朝のルチーアさんのネクタイの柄でも言いましょうか?」
「……」
そしてハヤトさんはまた口を塞いだ。
これはリボーンくんが知らないことだ。そしてルチーアさんという共通要項を持ち出した事だって十分、こちらの意思を察せるだけの情報だろう。
「獄寺くん、飼ってあげなよ。」
「十代目!?」
沢田さんの一言にハヤトさんは慌てて振り返るが、沢田さんは柔らかく笑うだけだった。
「リボーンもその気みたいだし、拒否権ないんじゃないかな。」
「ンな!?」
「ダメツナにしちゃー上出来だ。」
こんな誠実そうな青年にダメツナだなんて、辛辣なお子様ですね。
だがしかし、沢田さんとリボーンさんの意思が絡むのなら話は早く済みそうだ!
さあ!観念してください!
「獄寺が無理なら、お前、オレの愛人はどうだ?」
は?
ニヤニヤとハヤトさんの出方を待ちわびていた私の耳に届いた言葉に、ワクワク感が吹っ飛んだ。
ハヤトさんは閉じていた口を新たに開けたまま硬直しているし、沢田さんも目を丸くしていた。
きっとお二方共、私と心境は同じだろう。
あ…愛人? この場合、愛犬ではなくて?
…いやいやいや!
ぱちぱちと瞬きをした私の体の向きがリボーンくんの方へと向けられた。
楽しげな笑顔は、彼が私の返答を待ちわびていることを教えてくれる。
それに答えないわけがない。
「ぅわう」
望みが薄いからって鞍替えするには、早すぎるでしょう。
私のそんな返答に少年は笑顔を満足そうなそれに変えた。
「ククッ…まーな。だが、オレは女には優しいぜ?」
「わうっ」
女性云々はともかく、ハヤトさん私には親切でしたよ!
「コイツには勿体無ぇと思ったんだよ。
…ま、フラれちまったな。気が変わった時はいつでも言いな。」
まぁその時は是非 ―ぃ?
返答をしようとした私が、少年の顔へとおもむろに近付けられる。
そして私の顔の側面に彼の唇が寄せられた。
おっ おわばばば!
ぎゃー! 照れる!!
照れるけど、頬に生えている短いひげに結構触感があったこともわかったので心中は複雑だ!
「リボーン…お前、大丈夫か?」
パァン!
沢田さんの心配するような声と大して変わらぬタイミングで鳴り響いた銃声に、一瞬意識が吹っ飛んだ。
し、至近距離でこれは辛い!
くらくらと目を回す私を持ったまま、少年はハヤトさんの方へと歩み寄る。
先ほど発砲した先は沢田さんだったようだ。
そして彼も変わらず無事である。
何なんだこの人たち。ツッコミが発砲か。すげーな。
「いやだってお前守備範囲広すぎだって!」
「テメー偉そうな口叩くじゃねーか。
…ま、こーゆーことだ。後は任せたぞ獄寺。」
「は…―ハイ、リボーンさん!」
ハヤトさんへ手渡されたかと思ったら、そんなやり取りだ。
とてもイイ返事をしたからには、私はもう手放されることも無いだろう。
安堵の息を吐く私を見つめて少年はニヤリと笑った。
「コイツはいい女になるぜ?
せいぜい嫌われねーようにしとけよ。」
「は、はぁ…ってか、お前メスか。」
「ひゃん」
あんな口調の男、嫌でしょう。
私の返答を理解できたリボーンくんは小さく吹き出した。
おお、ウケた。
くつくつと笑いを漏らすリボーンくんをちらりと眺めて、沢田さんは大きくため息をついた。
吐いた重い空気に反してその表情は軽やかなものだ。
「じゃあとりあえず獄寺君の部屋で、ということで。
もし出かける時はオレの部屋―」
「サボる口実にする気か?広間にでも持ってっとけ。」
「……」
却下されてすぐに沈黙するところからみて、図星だったのか…
なんだ、かわいいなこのおにーさん。
「じゃあお前、そーゆーことだからな。迷わねーように気をつけろよ。
階段ぐらいは自分で移動できるようになれ。」
「わふ」
了解しましたー
「あ、そうだ。名前。」
ぱちんと指を鳴らした沢田さんに私を含めた視線が集まる。
そうだ、たしかにワンコとかお前とかとしか呼ばれてなかったな。
「せっかくですから10代目、つけてやってください。」
「え、いいの?」
「勿体無いぐらいです!」
一体何の譲りあいだ。
ハヤトさん、本当に沢田さんに心酔しているんですねー。
私も敬うように勤めよう。うん。
そんなことを考えている間に、うーん…と思案していた沢田さんがぱちりと瞬きをした。
「………?」
え?
お― おぉおぉぉ!!?
いやいやいやいや!!
「イイ名前っすね!!」
「リボーンがレディ扱いしているからね。」
いやいやいや! どういう偶然だ!?何事!?怖ッ!!
何でわかったの! いや、一体何から察したの!?
想定外の成り行きに戦慄する私に関係なく話は進む。
いや、意見する気は無いけど! 何も言う気は無いけど!!
こ、これが、彼が10代目と言われる所以だったりして。うわー心臓に悪い。
「なら―これからよろしくな、。」
ハヤトさんからのひと声で正気に戻る。
彼を仰ぎ見ることは難しくて出来ないけれど、それでも返事は当然。
「わう!」
こちらこそよろしくお願いします!
犬生活、再出発。
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2010/03/05
ひとまず区切りをつけました! 超直感発動でめでたく名前変換有効に!ばんざーい!
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