14:復活夢D
復活夢 --14
しっかり管制が敷かれた組織。
所属する強面な人々。
路地裏での騒動とその際のハヤトさんの銃の発砲。
そしてスーツ姿な皆さん。
こんな人たちに拾われて一週間だ。
なんとなくではなく、この人たちが一般人であるはずがないと確信していた私です。
―が。
これはちょっと、予想外です。
なんていうか…城?
うん城だね。古城?
屋敷?―まぁいい、ちょっと日本じゃ見かけないようなそんな大豪邸に私は連れてこられていた。
ハヤトさんが一般人だなんて欠片も思っちゃいなかったけど、こんなすごいお屋敷は想定外だった。
…まぁ、ちょっと前は異世界のお城にもお邪魔させてもらってたんだけど、それもまたどうでもいい話だ。懐かしむ暇もない。
ハヤトさんを見つけてちらほらと頭を下げる人がいるのが見える。若い人から中年まで揃っているからには、ここは流石におうちじゃないんだろう。
しげしげと眺めていた私だが、屋敷の入口で籠に入れられた。
屋敷の見聞はしばしここまでで、私の視界は薄い光が零れる狭い空間でいっぱいになる。
うおぉ…手と違って、なんて安定の悪い!酔う!酔うよ!
踏ん張りが効かせにくいから転がらないようにするのが大変だ。
時々、ハヤトさんの声が聞こえるけど相変わらず意味は分からない。
しかし、ハヤトさんは一体どこに行くんだ?
「む、獄寺ではないか。帰って来ていたのか!」
暫くして聞こえた男の声に、私の胸が高鳴った。
日 本 語ー!!…獄寺って、ハヤトさんの名字?
ハヤトさん顔つきはアジアっぽく感じなかったけど、けどゴクデラとかハヤトとかは外国の名前じゃ無理あるしな。
彼が日本語を話せる謎がちょっとだけ解明された気がする。
「なんでテメーがここにいる?」
返すハヤトさんの声には若干トゲが。仲の良し悪しはともかく、それなりに立場同じくらいなのかな。呼び捨てだし。
「ルッスーリアから食事に誘われていてな。今丁度帰ってきたところだ。」
「…お前等変に仲が良いな…オレも食事に出ていた。」
「しかし、バスケットなど珍しい物を持ってどこに行く?極限に似合わんぞ。」
ピンクの花柄カバー付きだしね。
「何持ってようがテメーには関係ねぇし、最後の一言は喧嘩売ってんのかこの野郎。」
「その様子なら沢田にか?」
「…ま、一応な。」
ほう。私は沢田さんの所に連れて行かれてるらしい。
「そうか、なら足を止めて悪かったな!」
「あーまったくだ。じゃあな。」
そんなやり取りを最後に、ハヤトさんは歩き出した。
再開された揺れに根性を入れて踏ん張りなおす。
目的地は遠いのかなぁ。
うんざりとそんなことを考えながら暫くして、ハヤトさんの歩みが止まる。
―コンコンッ
そこでノックの音だ。
そんな音だけでもわかる。ハヤトさん、滅茶苦茶丁寧だ。
「獄寺です。10代目、今よろしいですか?」
じゅうだいめ…? な、なんか凄そうなんだけど、なんで私は連れて来られたんだ?
沢田さんって10代目?10代目って何?老舗企業?
犬にも説明してやってくださいハヤトさん!
『あー…今丁度いいよ。どうぞー。』
想像を裏切る若い声に、私が覚えた焦燥感が瞬間的にへたってしまった。
こんな声の人なら、ぶっちゃけなんとかなりそうだと思ったからだ。
ドアを開ける音がして、ハヤトさんはまた歩きだす。10代目さんの所に行ってるんだろう。
「出掛けてるって聞いてたけど、なんか珍しい物持って帰ってるね。」
「自分もまさか持って帰ることになるとは思ってなかったんスが…10代目にはお見せしておこうと思いまして。」
「へぇ、何々?」
話の最中で私が入っていり籠がどこかに置かれた。
二人の声が近くなったことを考えたら、テーブルにでも上げられたのだろう。きっと。
そして籠のフタが開けられて、明るい光が入ってくる。
お行儀よくお座りをしていた私は、開けられた籠の口からこちらを覗きこんでくる青年と目を合わせることになる。
青年はススキのような茶色の髪に、それを濃くした瞳だった。
「…―犬?」
「わふっ」
犬ですね。はじめましてー
青年の驚いた顔がみるみるうちに笑みの形に変わり、そして彼はこちらへ両手を伸ばしてくる。
脇の下を包むように抱えられて、彼の顔の前に近づけられた。
まだ20代を過ぎたぐらいの年若い人だ。10代にも見えなくもないけど、纏う空気がどことなく違う。こーゆー感覚は信じても間違いはないと思う。
「ひょっとしてこの子、この間の匣の時の?」
ボックス?……アタッシュケースに入ってた立方体か?
「ハイ。あの後、南部のルチーアに任せてたんですが…自分で言うのもナンですが、どうも懐かれたみたいで。」
「獄寺くんが?」
「…預けてから一週間ドアに張り付いたままだったらしく、色々試してみたところ俺の名前に反応したそうで。ルチーアどもが見ていられないと根をあげました。」
ああ、あの時の。…うん、期待して走ったのにとんだ肩透かしをくらったよ。
「ははは、じゃあ獄寺くんが飼うの?」
朗らかに笑いながら、10代目?沢田さん?―が私を机の上に降ろしてくれた。
その質問の答えは是非とも知りたいところだ。
「…いえ。」
思わず、振り返った。
おいおい、まだ私は粘らなきゃならないのか青年よ!
「とりあえずここに連れて帰りましたが、飼うつもりはありません。」
断言した!断言した!!
愕然とハヤトさんを見上げる私の頭が10代目さんとやらに撫でられるが、ちっとも癒されない。
なんだ。じゃあなんで、連れてきたりしたの。
私の視線に気付いたハヤトさんはバツが悪そうに眉間に皺を寄せた。
こっち見てみろにーさん!
「自宅に連れてっても俺は殆ど帰りませんし、ルチーアも駄目だったことを考えても、結局家の世話をしている奴らもほだされそうで。」
「こっちで飼っちゃえば?」
賛成!賛成!
良い子にしますよ!信じられないくらいお利口にしますよ!
私を日本語環境にいさせてください!
「仕事の邪魔になります。」
「わう!」
なんねーっつってんだろ!
おっと、つい口が悪く。
「…獄寺くん、犬が怒ってるみたいだよ。」
「マジで頭は良いみたいですね。…それでも、俺だってこの本部を空けることも少なくないですから。」
「そーゆー時はオレの所に置いてていいよ?」
「もったいないお言葉ですが、10代目に同行する機会だって多いんです。」
「あー…だよな。」
うわわわわ!雲行きが怪しくなってきた!
「わうわうわう!」
ってゆーか、そーゆー事なら最初っからほだされないで下さいよ!
「…怒ってるね、犬。」
「お前が吠えてもダメなものはダメだ。利口なら聞き分けろ。」
む むっかー!!
こんな姿になって人間らしいプライドが砕かれて更には石臼で粉にされたような私に、まだ耐えろと!
こんな理不尽な環境に身を置いている私に、我慢しろと!
私は怒りに任せて立ち上がり、そして思いっきり駆け出した。
ぎょっと驚く10代目さんとハヤトさんを横目に、机から床へとダイブする。
心臓が縮み上がる高さだったけどなんとか着地!
無事を感動する間もなくすぐさま走り出して、見えていたチェストの下へと潜り込んだ。
「あ。」
「なっ―コラ!バカ犬!何してやがる!」
呆気にとられたような10代目さんの声とハヤトさんの罵声を背中に聞きながら、どんどん奥へと進む。
想像よりも埃が少ないことに感動しつつ、一番奥の壁際にたどり着いて私は振り返った。
腕も届くまい!
「バカしてねーで出てこい!」
「うぅー!」
撤回を要求する!
ハヤトさんと10代目さんが2人揃ってチェストの前に来て、そしてハヤトさんが床に膝を着いてこっちを覗きこんでくる。
「さっきのを訂正して欲しいんじゃないの?」
「こいつの頭が良いなら尚更、責任持てねーことは言いたくないんすよ!」
「嘘はよくないしね。…ワンコ、ほらおいで。」
おおぅ!10代目さんまで屈ませてしまった!
罪悪感はあっても、それでも私は大人気なくここから出る気にはならなかった。
「わう!」
こっちの苦労も知らないで!いやですよ!
「わうわう!」
何が悲しくてこんな弱い存在にならなくちゃならないのか!自分の力で環境を作れないなら、少しでもまともな場所で粘るしかないじゃない!
こんな所で粘ったってどうしようもない事ぐらい、分かってる。
私はチェストの下に潜り込んだだけなんだ。だから今前にいてくれる二人がここから離れたら、出ていかざるを得ないんだ。
なんだよくそ!人にすがらなくちゃ生きられないなんて、なんて人生だ!
稼ぐ手だても、使える口先も奪われて、どうしろって言うんだ馬鹿野郎!
泣くぞ!鳴くしかないけど!
「何泣かしてんだテメーら?」
突然聞こえた音の高い第三者の声に、10代目さんとハヤトさんの空気が変わったのが分かった。
私の視界には彼ら二人のものよりも細い足が一組、新しく床を踏んでいるのが見えた。
…子供の足…?
思わず、私も首をかしげる。
―と、同時だろう。
パァンパァン!
鋭い銃声の音が室内に響いたのは。
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2010/02/08
やっと出てくるあの方が! 携帯で打ったので短いです。
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