6-7:番外編





「髪飾り、珍しいですか?」
「・・・こういった細工のものは見たことがないな。」

しげしげと私が渡した髪飾りを眺めるお兄さんに問いかけると、存外にあっさりとした返答が返った。
彼がつけてくれた焚き火を挟んだ状態で私は浮かべていた笑みを深める。

「材料を持っていれば私が作れるんですけどねー・・・プレゼントに最適ですよ。
 メイド・イン・家です。手作りなんで値は張りますが、結構人気の一品です。」

彼が選んだのは銀粘土で作った土台に、買ったスワロフスキーのビーズをあしらった可愛らしい物だ。
濃い緑と、透明で澄んだ黄緑の二色を中心にした色合いがお気に入りだったのだけど、まぁそれが他人の御眼鏡に適ったというのなら諦めもつけられる。

「メイド・・・?」

英語は駄目と言うのを忘れていた。
ハタと気付いて、とりあえず修正しておく。

家で作られましたっていう意味です。」
「お前の家は工房かなにかか?」

炎に色を濁らせられた瞳がこっちを向いた。
工房・・・ガラス工房とかの工房?

「これは私の趣味の一つなんです。
 事情があって家を出られない時期があって、その時に覚えたの。
 20年近く生きててまさかこんな目に遭うとは・・・ホント、人生って不思議。」

しみじみと言った私を見ていたお兄さんの目が、突如大きく見開かれた。

「20!?」
「正しくは19なんですけどねー。・・・なんです、その驚き方は?
 私がその歳に見えないと?」
「・・・まったくといっていいほど、見えねぇ。」

顔を顰めながらの言葉。

「そんな真顔で言うな!まわりの人間が若すぎたんです!
 ジェネレーションギャップに悩んでいたことがようやく解決したんです!
 そういうお兄さんはいくつなんです? 私には同い年ぐらいに見えるんですけど。」
「・・・」
「黙秘しないでくださーい・・・そうですね・・・さっきの驚き方から察するに、もしかして私より若いですか?」

お兄さん(じゃなくなるだろうけど)の目が再び見開かれる。
率直でわかりやすい反応を有難う。

「なるほど・・・なら、18ぐらい?」
「・・・16だ。」

妥当な年齢のすぐ後に告げられた真実に、弾くように立てた右人差し指が痙攣した。
同時に表情筋が悲鳴を上げる。

「そ、育ってるなぁ〜!」

思いっきり感心した声を出しては見るものの、よーっく見てみればそのぐらいの歳にも見える。私の周りにたむろっていたピチピチの若い学生さん達と体の造りが一致する。
むぅ、私が人物像をはかり損ねるとは・・・若いのになんてしっかりした人だ。人斬りを平気でするだけはある。
感心と一緒に胸の内で毒を呟きながら私は息を吐く。

「その歳であんな風に剣が使えるなんて凄いな〜。バチバチーって光ったのもお兄さんだったんですよね。凄ーい。」

こんなに処世術を身に付けているなんて羨ましい!
しかも街の外でなら斬りたい放題らしいじゃないか。(←違う)
恨みも辛みも晴らしたい放題だ。トンデモナイ。

「っ 別に、それぐらいどうでもない!」

照れた。
何だこの人、可愛いところあるじゃないか。

「私は、自分ができないことをできる人はきちんと褒めるし尊敬する。
 ホント凄いよ。格好良い。」


自分を含めたものを、守れる強さの存在はいつも眩しい。


焚き火のせいではっきりはわからないけれど、きっと朱色に染まっているだろう彼の顔から視線を外して私は笑った。
さざ波のように私の意識を覆おうとする眠気を心地よいまま受け止め、瞼をそっと閉じる。
急激に動かした体がギシギシと悲鳴を上げていたけれど、瞼を閉じた際に写った懐かしい人影に心は温かだった。








私は帰れるのだろうか?













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2007/02/28

 主人公は多趣味。いつ何時、何が必要になるかわからないから。


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