23-24:番外編





「・・・なんで君がここに」
『お前っ 今までどこに行ってやがった!?』

仕方なく窓に駆け寄って投げた私の問いかけは、硬直した体を解いた少年の声に見事にかき消された。
窓は残念ながらはめ殺しだ。

・・・まぁ、いい。
ここはきっと彼の家なのだろうから私の質問は愚問ということにしてやろう。
その代わり、綺麗な緑色の瞳を表情と一緒に歪ませたルーク君とやらの質問に、私も眉を顰めることになる。


今まで?


「えっ と・・・『今』って」
『それになんだよその格好は!?』

一度ならず二度までも!
傷もスイカの果汁も放置している私の惨状はそりゃあ凄いものなんだろうけど、何だこの俺様は。私の話を聞いてぷりーづ。

「この格好は、あの時のままなんだけど。不法侵入を果たした人間に与えられる厚情っていうのは限りがあるものなのよね。だから見事に放置。
 ところでルーク君、『今まで』ってどういう意味?」
『・・・は、はぁぁ? お前頭おかしいんじゃねぇの?
 っていうか、窓開けろよめんどくせー!!』

まだ私を無視しますか。いい加減泣くぞ。

「頭おかしいとは失礼な!それにこの窓は開かない窓ですよ。
 それで、『今まで』って?」
『・・・一昨日の話しだっつーのに何で、き 傷とかそのままにしてんだ。』

戸惑いが滲み出るその呟きに正直度肝が抜かれた。

一昨日の話って、あの野菜雨は二日前?
場所があんまり飛んでないかわりに時間を飛んじゃってるよ。
この世界に来たのがはじめてで、次はケテルブルクの森の中、次は変な集団のところからふっとんで救われたし、その次は先生のレプリカさんの火にまかれた時。
んで、野菜雨の直後に飛ばされる、と。

無茶苦茶だ☆

「気がついたのがさっきだから私もよくわからないんだよね。」
『・・・気、失ってたのか?』
「うん。」
『・・・なんで。』
「何の構えもなく頭を打ったのが悪かったかな。
 具合が悪いとかは無いから、幸い打ち所は悪くなかったみたい。」

運がいいのか悪いのか微妙だけどね。
傷を心配してくれたところをみると、この子は純粋なんだろうなー。

「それで、君はどうしてこんなところにいるの?」

少なくとも窓の外を歩いて回っていい子じゃなかろうに。

『べ、別にお前に関係ないだろ。』

あらまー つっけんどんな返事だこと。
関係ないことは確かだけどね。

「ま、そうだけどね。私に声をかけてくれたのには何か理由がある?」
『・・・・・・・・・』

私なりに優しく問いかけたつもりだったんだけど、ルーク君はなにやら眉間に深い皺を寄せていらっしゃる。だけど悠長に待ってあげないよー。
この子と関わることでこれ以上目をつけられるのは御免だ。
なので私は腰に両手を当てて彼に向き直る。

「いいですか、君はこの家じゃとっても偉いんですよね?」
『お前、本当にオレのこと知らねーんだな。』

悪いね。知らないよ!

「ここ何日かで知ったのは、君は旦那様と奥様の大事な息子さん。ルーク君のことで分かった事って言ったらそれぐらいだよ。
 その大事なルーク君が私なんかのところに来ちゃダメでしょう。」

私の身がカワイイからこそ、是非この訪問は勘弁願いたい。
言い聞かせるように言葉を続けようとした私を、彼は鋭い視線で睨み付けてくる。

『オレに指図する気か!?』
「その権利が私にあると思う?」

お、絶句した。
そうそう、私にはそんな権利ないんだよ。

「君は偉いんだから、そんな所から話さずに私を呼べばいいじゃない。
 何か聞きたいことでもあったんじゃないの?」
『べっ ―別に、ねぇよ。そもそもお前がいきなり消えたりするのが悪ぃんだろうが!』


いやいやいや!


「それ、フライパンの時と一緒で私の意志じゃないから!
 だからね、君とこうやって勝手に話しているのが見つかったら、私の身が危ないわけ。」
『は?何でだよ?』

んー 君いくつだよ。偉い子じゃないのか?
てっきり身分とかの意識が強いと思ったんだけど、この子は少し違うのかな。
どこの馬の骨とも分からない私なんかに声をかけるぐらいだし。

「いい・です・か。私は本来、君と話せるような立場の人間じゃないんですよ。
 君を大切に思ってる人が馴れ馴れしく口を利いてる私を見たらどうすると思う?私が君を攻撃しない根拠も何もないんだから、君を守る為に私をどうにかするに決まってる。
 一昨日の状況を覚えてるよね?私はいつだってあんな待遇になってもおかしくないの。」

さすがに、暴力を受けるのが当然な立場は勘弁だ。
私はマゾヒストじゃない。断じて。
そしてこの子はいきなり私が組み伏せられた姿を見て驚いていたぐらいだ。
彼はあの扱いが、人間に対して相応しいものだと思っていないのだろう。

正直、味方になってくれたら心強い。
ふふふっ 懐柔しない手はないかなー


いや・・・危ない橋は渡らないほうが良いか。


「んー・・・ま、いつか機会があったらよろしく。ルーク君。」
『どーゆー意味だよそれ。』
「こんなところをうろついているのがバレたら怒られるんじゃないの?
 あっち側の茂みに庭師さんみたいな人がいたけど、大丈夫?」
『・・・』

私が指し示した方向へと振り返るが、彼の視点からは見えないだろう。
けどあちらから見ようと思えば、きっとこの子の目立つ頭はよく目に留まる。

「心配してくれてありがとうね。」
『ばっ だっ― 誰が! お前の心配なんかするか!』

うわー 反応が若い!
何だこの子、可愛いじゃないか。

「おーい、見つかるよ。」
『ぐっ』
「もしかしたら明日にもいなくなっちゃうかもしれないけど、そうじゃなかったらよろしく。
 またね。」

噴出しそうになる衝動を堪えて手を振る。
この子が見つかって変に勘ぐられても困る。

なのでご退場を願います。













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2009/03/24

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