◆ゲーム本編









「いい加減にしないと、その舌を根っこから引き抜くよ。」





物騒な言葉にその場にいた全員が息を呑む。
声の方向、その場から去ろうとしていたジェイドの前には、下着同然の格好で全身に包帯を巻かれているが立っていた。

!動いて大丈夫なの!?」
「心配有難うアニス。
 でもそれは、今聞きたくない言葉だ。」

ジェイドを正面から睨み、にべもなく言い放つ。
そんなを一瞥してジェイドは自分の上着に手をかけ、手早く脱いだそれをへと突き渡す。胸元に押し付けられた青い軍服を
は何も言わずに羽織ると、そこで場に似合わない満面の笑顔を浮かべた。


 ガツンッ


そしてジェイドへと大きく一歩踏み込み、硬く握った拳を前の人の左頬に叩きつけた。
衝撃に吹っ飛んだ眼鏡が硬い音をたてて床に落ちると、首を横に向けたジェイドが目を細めてへと向き直る。
そしてその直後、ジェイドが右手を振った。


 バシンッ


今度はの顔が横に・・・いや、体まで伴って振りぬかれた方向に傾いだ。
その体を支えたのは、彼女を殴ったジェイドだったりする。

「――いらない。触らないで。」

真っ向からそれを拒否し、は自分の足で自分を支えて、今度はガイへへと裸足の足で歩き出す。


 ガツンッ


そして呆然としているガイへ、ジェイドと同じように拳を振るった。

「ッ !?」

そして次に、傍にいたナタリアに近づいて右手を振る。


 パチンッ


ただし、男性陣とは違って平手だ。
有無を言わさずに次にティアをはつり、そして流石に警戒の姿勢を取っていたアニスも同じように引っ叩いた。
左の頬を真っ赤にしたは、そこでようやく立ち止まる。
ルークとイオンを除いた全員に振り下ろした右手を振りながら、全員へと視線を向ける。

「…さっ、目は覚めた?」

ジェイドを除いて、呆然とする一同にはそう言い放った。

、一体何を?」
「悪いけど、私は自分が気に入っている子を悪し様に言われて黙っているような人間じゃないの。  何が起きたのかよくわかってないけど、今のこの事態で、人を責めているような暇はないんじゃないですか? 優先順位を間違え ちゃいけません。
 こういうときこそ感情に走ったらいけないんですよ。」

戸惑っているイオンと、そして全員を諭すような言葉だが、それを聞いたジェイドが不快そうに眉を歪めて見せた。

「状況をわかっていないのなら黙っていなさい。」
「私が、言われて黙るような人間だと思っているの?
 少しは冷静になったらどうですか年長者。」

眼鏡を拾ったジェイドはそのフレームを指先で弄りながら低く笑った。

「馬鹿な子供には付き合っていられません。
 勝手に慰めでもしていなさい。」

苛立ちと怒気の強い声だが、今更、彼の声に怖気づくようなではない。
彼女も鼻白むように小さく笑う。

「慰める? 今のこの子に必要なのはそうじゃないでしょう?
 私をそこまで侮るんじゃないですよ。阿呆。」

言って、は立ち尽くしているルークへと歩み寄り、再び右手を振った。


 バチンッ


そしてそれはあっさり、ルークの頬にぶつけられる。

「私は事情を知らない第三者だから、ついさっき聞いた馬鹿な発言の人間を、みんな等しく殴らせていただきました。
 一人の人間を前にして言い放った言葉を、全員思い出して、噛み砕いて、よく考えなさい。それが間違った言葉じゃないのか、 後悔しないのか、よく考えなさい。」
「―ッ なん、だよ。 お前まで俺が悪いって言うのかよ!?」

の言葉の意図するところを理解できずに口をつぐんだ中で、ルークだけが叫んだ。
その言葉に全員の瞳に剣呑な空気が戻ってくる。

「私は事情を知らないと言ったはずよ。
 判断して欲しいのなら説明をしなさい。
 私が今みんなを殴った理由は全員が馬鹿なことを言ったからだと言ったでしょうが。」
「だ、って 師匠が――師匠が言ったんだ!
 超振動で瘴気を消せるって!
 師匠がやれって言ったんだ!」

ルークの悲鳴にも近い喚き声に、この場に居る全員の感情が湧き上がってくるのがわかった。
怒りや軽蔑の強くなる視線に気付きながら、は自分は悪くないのだと言うルークを見つめ続ける。



つまりここ最近のルークの不審な行動は、ヴァンから吹き込まれたことで。
ルークのヴァンに対する妄信がルーク自身の孤立を生んで。


それで、この結果か。



「ほらっ!! こんなサイテーなヤツ放っておきなよ!!」
「あんなにたくさんの人を犠牲にしておきながら、よくそんなことが言えるわね。
 ・・・いいところもあると思ったのに。
 もしかしたら、そこのだって殺していたのかもしれないのよ!?」

憤りを露わに叫ぶアニスとティアを見て、はこめかみを押さえた。
ルークといいティア、アニス、若い子たちは感情のコントロールができないのかと、軽く絶望を覚えたのがその理由。


一発殴られる程度じゃ落ち着けないらしい。


「ああもう、これじゃ話ができないじゃないですか・・・
 わかりました。 わーかーりーまーしーた。
 一度ここは解散にしましょう。みんな頭を冷やしてください。
 ああ、私がみんなの邪魔をしたのかな? そりゃあ悪ぅござんしたね。」

行くてを遮った筆頭であるジェイドへと会釈を返しては乱暴に、まだ濡れている自分の頭を掻いた。

居心地の悪さは最高潮だ。
しかも、冷静な人間が一人もいない。
全員がルークを軽蔑した眼差しで刺し、彼を視界に入れることすら厭んでいる。
しかも、パーティ一番のポーカーフェイスのジェイドですら滾っている感情を露わにしてみせているのだ。


一人の力では無理だ。


「・・・ブリッジへ戻ります。」

ジェイドが、立ち去る。

「・・・アナタは本当に変わってしまわれたのですね。」

ナタリアが。

「・・・ルーク」
「イオン様!あんな馬鹿、放っておきましょう!!」

イオンを引きずってアニスが。

「・・・・・・」

そしてに視線を滑らせたティアも、後に続く。

「だって、何でっ 何でだよ―」
「ルーク・・・」

そして、ルークを一番大切に扱ってくれていたガイも、その表情を歪ませていた。

「これ以上、幻滅させないでくれ・・・」

は、放たれる言葉が、ルークの体を突き飛ばしたのを見た。
突き飛ばされた先に、この紫色の霞たちこめるこの世界よりも、深い闇が広がっているように見えた。




みんな馬鹿だ。




は内心で唇を噛む。



よく考えろよ。
よく考えてみればわかるだろう。




本当に悪くないと思っている奴が、あんなに必死に泣き叫ぶわけがないだろうに。





「ルーク。」
「――ぅるせぇ!! お前も、どっか行けよ!! いっちまえ!!」

わなわなと震えるルークが叫ぶ。
そんな彼の足元には、水色のチーグルがいた。
大きな瞳にいっぱい涙を溜めて、それでも健気にルークを見上げている。

「ルーク、ルークルーク。」
「うるさぃ!! 煩い!! 黙れ!!!」

が纏っている、ジェイドの青い軍服を視界に入れたくなかった。
だからルークは、両手を広げてゆっくりと近づいてくるに腕を振った。
突き飛ばされそうになる前に何とかその手を避けながら、はルークの腕を握る。
何度振り払われても、そっと握る。

「あいたっ いたいって。 叩かれたら痛いでしょう。
 ほら、落ち着きなさいルーク。」

の、一人落ち着いた声が癪に障った。


何も知らないくせに!
何もわかっていないくせに!!


「ぅぅるせえぇぇぇッ!!!!!」

懇親の力を込めて、自分よりも一回りは細いその体に両腕を突き出した。

「――んっ ぐぁ――だっ!
 ・・・あーもぅ・・・」

力任せに突き飛ばされたの体が短い呻きを残して床に転がる。
打ちつけた腰の痛みに眉を顰めたは、溜息を噛み殺しながら再び立ち上がろうとした。
そしてその体が、彼女の背後から伸びてきた腕によって抱え上げられる。

「ひっ ぎゃぁ!」

ウエストを両手で掴まれたかと思うとそのまま丁寧に向きを変えられて、俵を担ぐように肩に乗せられた。
視界に入った人物に本人以外が息を呑む。

「ちょっ ジェイド、さん!!」

に呼ばれても何も答えず、ジェイドはルークに一瞥もくれずにそのままその場を歩み去っていく。これまた何のつもりか、 の両足をがっちりと片手で押さえたまま。

「何しているんです!? ちょ、邪魔しないでくださ―ァ――ひっい っだぁぁぁぁ!!
 ちょ、傷ッ!傷触ってる!! 掴んでッ や、やめてーッ!!」

腿の裏などにあった打撲の場所を思いっきり掴まれて泣き叫ぶを担いだまま、ジェイドはルークを残してとうとう艦内へと 戻ってしまう。

「る、ルーーク!!」

の声だけが、暗い、魔界の空に響いた。













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2008/01/08

 書きあがったのでUPしてみたり。
 何で彼女が怪我をしているのかとか、なんとか、色々ネタはあるんですがとりあえずこれだけ〜
 なんだかジェイドさんが懐いている罠 ・・・二人の関係が不明です(笑)



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