6-7:番外編
天候のおかげで移動がままならないことなんて、そりゃあ旅をしていればザラにある。
この日もそんな天候・・・のおかげで、一拍余分に宿に泊まる事になったのだった。
ちなみに、今一同が泊まっているのは普通の宿である。(金銭面の問題だ。)
もちろんそう豪奢でもあるわけがなく、周りの建物に愉快なものもない。
となると、必然的に皆暇をもてあそぶことになるのだ。
「ねー。」
テーブルに座ってホットココアをちびちびと飲んでいたの隣に、暇人その2(1はもちろん自身)のアニスが膝を乗せた。
を見上げたまま腰を落ち着ける少女に視線を投げて、もう一口すする。
「いきなりどうしたんですアニスさん。
ココアの残りはルークにあげちゃったからおかわりは無理ですよ。」
「そうーじゃなくって!
暇だからちょっとお話しようよーって思ったの!」
茶化すに真っ向から叫ぶアニス。叫ばれた当人は珍しそうに目を瞬いた。
「・・・はぁ、話ですか。」
口をつけていたカップをおろして相槌を打つ。
「ってなんかフツーの人と毛色が違うんだよねー。
それに、なんだかんだいって一番素性が不明だし?」
「まぁ私のプロフィールを好き好んで聞く人もいなかったワケだし。
ルークやガイ、ジェイドさんぐらいならパラパラ知っているんじゃないかな?
アニスさんだってどうなんです? ご家族や出身はどちらなの?」
「私のことはまだいいの!
まずはのことから!」
「むむっ 私が話を逸らそうとしたのにそれを防ぐなんて、中々アニスさんもやりますね。」
机を叩いて先を促すアニスに感心の言葉を返しては一度笑う。
「そんな面白いもんじゃないよー。
家族は両親と私だけの三人家族でペットはなし。
ちょっと前までは一人暮らしをしてたけど、いろいろあって偶然いろんな人に助けられ、まずジェイドさんに会ってそれからなんだか色々あってルークとガイにも会ったかな。
―で、至る現在。なんら面白いことはないでしょー。」
端折りすぎとは言うなかれ。
にしてみれば詳しく話すだなんてそんなしち面倒臭い事をする気にはならないのだ。
「へーも一人っ子だったの?」
「んん?私はルーク以外に一人っ子を知らないんだけど、もしかしてアニスさんも一人っ子?
ああーだからそんなにしっかりしているんですね。
一人っ子の子供って両極端だから・・・」
「おい、それどういうことだよ?」
離れたテーブルに座っていたルークが達へと振り返った。
不機嫌そうに睨む翡翠の瞳を見つめ返すのは黒曜石の瞳である。
その口には、あからさまな笑み。
「ご自分の胸に手を当ててよーっく考えなさい。
どうせだからルークも一緒に話しましょうよ。暇だし。」
「ケッ 誰が!」
おいでおいでと招くが、案の定ルークはそっぽを向いてしまう。
ある意味期待を裏切らない行動なので、は笑いを禁じえない。
「私がもっているネタといったらこれぐらいなもんですよ。」
「あ、アニスちゃん一つ気になることがあるんだよねー。」
「んー? 答えられることなら答えましょう。」
はっはっはと笑うにアニスは指を立てて詰め寄った。
「の小さい頃ってどんな風だったの?」
「・・・は?」
この質問は予想外だった。
「おや、何やら面白い話をしていますね。」
突如、机を覗き込んできた長身の男にはまともに顔を顰めた。
その顔を見上げることなくアニスへ視線を投げる。
「・・・少なくとも、ジェイドさんよりはまともな人間でした。」
「いきなり失礼な人ですね。」
「もー大佐、邪魔しないでくださいよぉ!
そうじゃなくて、もっと詳しく!」
妥当な返答だと思っていたがアニスから駄目だしを食らってしまった。
すこしばかり唸って、目を泳がせて、は意を決したように溜息をつく。
「・・・別に面白いことは無いですよ。
10歳ぐらいまではフツーの一般家庭の子供で、それから色々あって両親と別れて暮らすようになったの。その時は親戚と暮らしてたんだけど、その親戚が人間のクズみたいな奴で危うく私が命を落としそうになってね。
で、その時に知り合った人の協力でめでたく私の一人暮らしが実現しました。
―至る現在。」
シーン
「・・・? どうしたんですか二人とも。
アニース、質問しておいて黙るなんて酷いですよ。」
押し黙る二人に首を傾げ、とりあえず質問をしてきたアニスに話を振る。
振られたアニスは、僅かに体を震わせた。
「い、命って・・・のパパたちは何も言わなかったの!?」
「あー・・・両親はすでに、私のことなどあずかり知らぬ場所に行っちゃっているので無理だったと思うなー。
いいの、両親に関してはきっと二人で仲良く幸せにしてくれれば。流石に親類同士との骨肉の争いをまじまじと見せ付けるわけにもいかなかったしね。」
「えー何それ。」
「そういうわけなの。今言った通りあんまり面白い話じゃないから詳しくは割愛するよ。」
ひたりと見据えてくる赤い瞳に気付きながらも、は話を斬り捨てる。
アニスも、今聞いた片鱗だけでも不穏そうな雰囲気の漂う重そうな話は聞きたくはない。
むーと唸りながら、しばし思案顔を作る。
「じゃあねー・・・の恋バナとか!」
ぶっ
かなり温くなってしまったココアを口に含んだまま、は小さくそれを噴き出した。
ぶるぶると体を震わせながらギギギと固く首を動かす。
「あ、あ、あ、アニスさーん???」
「って二十歳越えてるんだよねー? なんか経験ありそうじゃーん♪
どうなのどうなの?」
瞳をらんらんと輝かせる少女は心底楽しそうだ。
恐ろしい。獲物を狙う目だ。
「・・・まぁ経験がないわけじゃないですけど。」
話を打ち切っても暇だけが残るので、仕方がなくは話し始めた。
「え! 嘘!?」
「ちょいコラ、君さっき経験がありそうだと言っていたくせにその反応は何だ?」
「えー否定されるかと思ってましたー。」
悪びれもせずに正直な言葉を述べるのは少女の美徳だとは思うが・・・
ともかく、話を続けるためには溜息を吐きつつ軽く咳払いをする。
「最近で言ったらうーん・・・18の時に、16歳の人と付き合ってたね。」
「「「「えぇぇぇッ!?」」」」
「うおっ なんですか突然!
アニスさんだけならともかく、ガイやルーク、それにティアさんまで!」
驚愕の声に怒鳴り返すと、ミュウを抱いていたティアはぼっと頬を赤く染めた。
「だ、だって―その・・・い、意外だったのよ。」
「ほぁー? 私が異性と付き合っていたことがですか?
・・・後の三人も同じ理由?」
順番に視線をめぐらせるとルークがはっとしたように立ち上がる。
「なんだよそれ!聞いたことねぇよ!」
「お馬鹿。誰が好き好んでそんなことを話すか。
過去の話。過ぎ去ったことなの!」
「それぐらい話せよ!」
「ほほーぅ、では私は聞かれもしないのに、そいつと付き合っていた頃の私の状況を赤裸々に語り、終局を迎えたその時の状況も声を大にして話せと。
誰がそんなことをするか!まるっきりの阿呆じゃん!」
「俺が話せっつったんだから話せばいいんだよ!」
「まだ言うかその口は!」
「―ま、まぁ二人とも落ち着けよ。」
今にも掴みかからんばかりな言い合いをする二人の間に入ったのはガイだった。
「話す機会がなかっただけなんだからルークもそうカリカリするなって。
それに、今は話してくれているだろ。」
「・・・チッ。」
「それで、はその人とどこまで行ったの?」
舌打ちをして顔を逸らしたルークの首が再びたちの方向に戻るのが見えた。
「・・・直球ですねアニスさん。
そうですねー・・・こんな大勢の前で言えないところまで、と言っておきましょうか。」
笑い半分に言ってのけるにジェイド以外の全員が目を剥く。
ティアやルークなどは頬を真っ赤に染めていたりする。
初心だなぁ。
「えぇー何それ爆弾発言!」
「あっはっは アニスは一体どこまで妄想しているんですかー?
ジェイドさんも無言で佇まないでくださいよ。」
見上げられたジェイドはこれ見よがしに肩をすくめて見せる。
「ま、あえて発言するなら、真半分の冗談は性質が悪いと思いますよ。」
「それはそれ、これはこれ。
私一人が遊ばれてなるもんか。」
衝撃に呆然としている青年少女を眺めて、はあっはっはと笑って見せた。
暇つぶしが必要なのです。
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2007/05/14
暇な時にはそれを潰すものが必要です。
真意がどこにあるのかはまたいずれ・・・
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